定義と準備
以下では,初等部分構造を用いた議論をするので,まずその準備をしておく:
κ≥ωとする.Mがκ-closed ⇔[M]<κ⊆M
θ>κ≥ωとする.S∈[H(θ)]≤2κとおくと,M≼H(θ)で次を満たすものが存在する:
S⊆M
Mはκ+-closed
∣M∣=2κ
Proof. Löwenheim-Skolemの定理よりM0≼H(θ)でS⊆M0かつ∣M0∣=∣S∣=2κを満たすものが取れる.Mα≼Mβ≼H(θ),∣Mα∣=2κ(α<β<κ+)なる初等鎖を構成できれば,M=⋃α<κ+Mαが求める物となる.まず,αが極限順序数の時にはMα=⋃β<αMβと置けば,初等鎖定理よりβ<α→Mβ≼Mαとなり,濃度の条件もOK.つづいてα=β+1 とする.この時,(2κ)<κ+=(2κ)≤κ=2κκ=2κに注意すれば,Sα=Mβ∪[Mβ]<κ+の濃度は2κである.そこでLöwenheim-Skolemの定理によりSα⊆Mα≼H(θ),∣Mα∣=2κなるMαを取れば良い.
κ≥λ,σを基数,n<ωとする.この時, κ⟶(λ)σndef∀f:[κ]n→σ∃Z∈[κ]λ∀A,B∈[Z]n[f(A)=f(B)] 各fに対するZを,分割fに関する等質集合(homogeneous
set)と呼ぶ.
κ≥λ≥ωの時,次が成立: κ⟶(λ)σ1⇔{σ<cf(κ)σ<κ(κ=λ)(κ>λ)
Proof. n=1のとき,κ⟶(λ)σ1は次と同値であることが判る: ∀f:κ→σ∃α<σ(∣f−1[{α}]∣≥λ)
まずはκ=λの時を考え,対偶を示す. σ≥cf(κ)の時,A={aα:α<σ}∈[κ]σをκの共終部分集合とする.f:κ→σをf(α)=min{γ∣α≤aγ}により定める.すると,各γ<σに対し∣f−1[{γ}]∣≤∣aγ∣<κとなるのでκ↛(κ)σ1.逆にκ↛(κ)σ1とする.f:κ→σを∣f−1[{β}]∣<κを満たすようなものとする.この時κ=⋃β<σf−1[{β}]よりσ≥cf(σ)となる.よって示された.
今度はλ<κとし対偶を示す.σ=κとすると,恒等関数id:κ→κを考えればf−1[{α}]={α}よりκ↛(λ)κ1である.逆に,κ↛(λ)σ1とし,f:κ→σが∣f−1[{α}]∣<λを満たすとする. κ=∣∣β<σ⋃f−1[{β}]∣∣=max{σ,β<σsup∣∣f−1[{β}]∣∣} ここで∣f−1[{a}]∣<λよりsupα<σ∣f−1[{α}]∣≤λ<κとなる事に注意すれば,κ=σとなる.
よって,n=0,1の時のκ⟶(λ)σnはかなり簡単になるので,興味があるのはn≥2の時である.次はRamseyによる古典的な結果である.本筋の命題ではないので,証明は概略に留める:
∀n,k<ω[ω⟶(ω)kn]
証明の概略. nに関する帰納法で示す.n=0は先程の議論より自明.nの時成立を仮定し,n+1の場合を考える.f:[ω]n+1→kを固定し,各x∈ωに対し,fx:[ω∖{x}]n→kをfx(A)=f(A∪{x})により定める.次を満たすHℓ∈[ω]ω,xℓ<ω,iℓ<kを帰納的に構成する:
Hℓ⊇Hℓ+1
{xℓ:ℓ≤n}∩Hn=∅
xℓ∈Hℓ−1(ℓ≥1)
fxℓ[[Hℓ]n]={iℓ}
すると,L={ℓ<ω:iℓ=i}が無限集合になるようなi<kが少なくとも一つ存在する.この時,H={xℓ:ℓ∈L}が求めるものとなる.
よって特にω⟶(ω)22.では,等質集合の濃度が非可算となるような,即ちκ⟶(ω1)22が成り立つようなκはどんなものがあるだろうか?実は(2ω)+で十分である:
(2ω)+⟶(ω1)ω2.よって特に(2ω)+⟶(ω1)22.
これは次のErdős-Radoの定理でn=1,κ=ωとおけば直ちに従う:
κ≥ωとする. exp0(κ)=κ,expn+1(κ)=2expn(κ)
と表すとき,次が成立: (expn(κ))+⟶(κ+)κn+1
Proof. nに関する帰納法で証明する.n=0の時はκ+⟶(κ+)κ1であり,κ<κ+=cf(κ+)なので補題 2より成立.
n+1の場合を考える.以後,簡単の為expn(κ)=χnと略記する.帰納法の仮定は, (χn)+⟶(κ+)κn+1 である.f:[χn+1+]n+2⟶κを固定し,Z∈[χn+1+]κ+でfについて等質となるものを得たい.そこで,まずf,χn+1+∈H(θ),κ⊆H(θ)を満たす十分大きなθ>ωを取り,そのχn+-closedな初等部分構造M≼H(θ)でf,χn+1+∈Mかつκ⊆Mとなるものを取る.補題
1 より,特に∣M∣=2χn=χn+1とできる.すると,∣M∩χn+1+∣≤χn+1となり,χn+1+の正則性よりj=sup+(χn+1+∩M)∈χn+1+が取れる.
以下,各ξ<χn+に対し, ∀η<ξ[iη<iξ]∧∀η0,…,ηn<ξ[f({iη0,…,iηn,iξ})=f({iη0,…,iηn,j})]
を満たすよう帰納的に⟨iξ∈χn+1+∩M∣∣ξ<χn+⟩を定めたい.そこで,ξ未満まで出来たとし,D={iη:η<ξ}⊆M∩χn+1+とおく.この時∣D∣=∣ξ∣<χn+なので,Mのχn+-closed性からD∈Mとなる.また,Mは有限部分集合について閉じるから,D⊆Mより[D]n+1⊆Mとなり,更に∣[D]n+1∣=∣D∣<χn+から[D]n+1∈Mも云える.そこで,g:[D]n+1→κをg(A)=f(A∪{j})により定める.すると,κ⊆Mとなるように取っており,H(θ)でZFC−P(特に対の公理)が成り立つことから[D]n+1×κ⊆M.よってg⊆[D]n+1×κ⊆Mとなり,特に∣g∣<χn+だからみたびMのχn+-closed性よりg∈Mが言える.今, H(θ)⊨∃y∈χn+1+[∀i∈D(i<y)∧∀A∈[D]n+1(f(A∪{y})=g(A))]
が成立する(yとしてjが取れる).この右辺の論理式に現れるパラメータχn+1+,D,[D]n+1,f,gは全てMの元であり,M≼H(θ)であるので,Mでも成立する.そこでiξとしてそのようなyを取れば良い.
W={iξ:ξ<χn+}と置く.この時fj(A)=f(A∪{j})によりfj:[W]n+1→κを定める.帰納法の仮定を分割fjとWに適用すれば,Z∈[W]κ+,α<κでfj[[Z]n+1]={α}となるような物が取れる.この時,A={iξ0<⋯<iξn<iξn+1}∈[Z]n+2(ξk<ξk+1)を任意に取れば, f(A)=f({iξ0,…,iξn,iξn+1})=f({iξ0,…,iξn,j})=fj({iξ0,…,iξn})=α ここでA={iξ0,…,iξn+1}の取り方は任意なので,Zはfについて等質であることが示せた.